前回までのブログで、弁護士の探し方、弁護士の選び方について書きました。
初めて法律相談する場合は、弁護士のところに連絡とるのも緊張してよく分からないという方もいます。
法律相談の申込は、電話で結構です。
探した法律事務所(弁護士の事務所のことを法律事務所といいます。)や弁護士、弁護士会の法律相談センターには、ホームページなどに電話番号が書いてますから、
その電話に掛けて、法律相談をしたい旨を伝えれば、いつ行ったらいいか等を案内してくれると思います。
電話が24時間対応というのも少ないでしょうし、営業時間外に電話しても出ないかもしれません。
電話での申込が難しくても、多くのサイトでは、問い合わせフォームが用意されています。
問い合わせフォームは、時間に関係なく送ることができます。(問い合わせを受ける側は当たり前に思うかもしれませんが、問い合わせフォームの送信も営業時間内でないとならないと思う方もいます。)
私としては、お電話で申込されるよりも、できれば問い合わせフォームを利用してもらいたいです。
連絡先を残してもらえますし、ご相談内容を、まずはご自分で整理してもらえるので、その後の相談がスムーズに入ることができるからです。
法律事務所に予約をいれずに行くのはお勧めしません。弁護士の予定が空いているとは限りません。また、法律事務所は色々と難のある人も押しかけてくるおそれもあるので、突然の来訪者は警戒されます。
法律事務所に、問い合わせフォームか電話で連絡を取って、法律相談の予約をして、法律相談の準備をしてもらった方がいいです。
準備は、相談当日に持参する書類等の確認です。
契約についての相談なら契約書、不動産の問題なら全部事項証明書(昔で言う登記簿謄本)などの、相談したいことに関係する手持ち資料の用意です。
また、口頭で説明するのは普通は慣れていないと思いますので、事実関係を時間順にしたメモなどを作成しておくと良いと思います。
以前に作った動画です↓ 御参考まで。
前回のブログで弁護士の探し方を書きました。弁護士の情報を集めた後は、どのように選べばいいのかが問題になるでしょう。
結論としては、実際に会って話してみて、説明が親切で分かりやすいかどうかといった相性で決めるのがいいのではないかと思います。
次のような点は、あまり弁護士を選ぶ基準としては実際は役に立たないと思います。
【専門の弁護士かどうか】
弁護士の専門は何かとか、実績がどうかということが気になるかもしれません。
しかし、弁護士の”専門”や”実績”は、弁護士ではない方に判断は難しいと思いますし、弁護士でも自分あるいは他の弁護士の”専門”や”実績”を評価するのは容易ではないと思います。
弁護士でない方は、ご自身の仕事の分野をその分野の人でない人が専門や実績等を評価することは難しいということは想像できるのではないでしょうか。同様に、弁護士の専門の有無や程度は、弁護士でない人には分からないと思います。
また、弁護士は、弁護士会の広告の規制によって、”専門”の表示ができないことになっています。
そのため、弁護士のアピールとして、「●●に強い弁護士」「重点取扱分野」「注力しています」といった表現になっています。
医師の専門医は、学会による認定によるようですし、専門認定をする機構による認定の制度が始まるようです。
また、法令に基づく各種の指定医の制度もあります。
しかしながら、弁護士には、学会が認定する”専門”や認定機関によるものはありませんし、指定医のようなものはありません。
●●法学会に属しているというのは、基本的に入会にあたり知識や経験の審査があるわけではありませんから、興味関心の深さは示せても、専門や実績があるかは別問題です。
(ちなみに、私は、日本税法学会と租税訴訟学会に入っています。)
ネットやCMでは、何かの専門(債務整理や過払金の専門、離婚専門、交通事故専門、企業法務専門など)をうたう弁護士がいます。
同業から見ても、専門をうたってもおかしくない弁護士はいますが、専門を自称している弁護士が同業者の弁護士から見て、専門というに足りる仕事をしているかというと疑問なところも少なくありません。
理系の知識が必要になるような知的財産の案件や、外国語や外国法の知識が必要になる案件などは、そういった案件を扱える事務所に依頼すべきではあります。そういった案件が、普通の弁護士のところに相談で持ち込まれたら、まともな弁護士であれば依頼を断って、そのような事務所を探すように言うでしょう。
【経験豊富かどうか】
弁護士としての経験が豊富(経歴が長い)とか、特定の事案の経験があるかといった点も相談者としては気になるところかもしれません。
確かに、ベテラン弁護士だと、事案の解決への期待や依頼者の気持ちに寄り添ってくれるのではないかという期待が生じるのは分かります。
しかし、これもご自身のお仕事の分野に比べて考えていただければお分かりいただけるかと思いますが、
経年により仕事の経験はしていてもダメな人は必ずいるものです。長年の経験で手抜き仕事に長ける人や、勉強をしない人はどこの世界にもいるでしょう。
弁護士でも、ダメなベテランより、優秀な1年目の若手の方がきちんとした仕事をすることもあります。
弁護士歴数十年で、内容も日本語もひどい書面を出してくる弁護士など、ざらにいます。
ある事案の経験がなくても、法律の問題には基本的な思考が共通していますし、法令を調べ、書籍等に当たることで対応は可能ですから、研究を怠らない人であれば、怠惰なベテランより真面目な新人のほうがよほどマシです。
ですから、弁護士を選ぶにあたり、あまり経験とかベテランかということにはこだわらないでいいと思います。
【有名かどうか】
何をもって”有名”とするか分かりません。
テレビなどに出ていることと、弁護士の能力はたぶん関係ありません。
テレビによく出る弁護士は、演出として有能そうに見せられているのかもしれません。
メディアに出ているかどうかではなく、何かの分野で有名かどうかということで気になさるのかもしれません。
有名≒評判が良い
というニュアンスなのでしょうか。
そういった評判は、なかなか弁護士業界の外の方には分からないと思いますので、
有名かどうかというのも気にすることではないでしょう。
いくつか気にされそうな点を挙げました。
最初に述べたように、実際に相談してみて、相性の良いと感じる弁護士に依頼するのが良いと思います。
どういった弁護士が自分にとって相性の良い弁護士か分からなければ、3人くらいの弁護士に相談して、比較的良いと思った弁護士に継続して相談・依頼をすれば良いと思います。
一般論ですが、
・相談者の話を聞いてくれる(弁護士が話を決めつけない)
・専門用語をできるだけ使わずに分かりやすく説明してくれようとしている
・弁護士費用などお金のことを明確に説明してくれる
といった弁護士が後々の不満も少なく、信頼していけると思います。
私も こういった点は、少なくとも気を付けていきたいと思っています。
〒060-0003 札幌市中央区北3西7 1-1 SAKURA-N3
北海道コンテンツ法律事務所
弁護士 林 朋寛
(札幌弁護士会所属)
http://www.sapporobengoshi.com
遠方からのお問い合わせの結果、お近くの弁護士を探された方が良いのではというお答えになることがあります。
そういった場合、どのように弁護士を探したら良いか悩まれる方がいます。
弁護士を探す方法は、次のようなことが考えられます。
【誰かに教えてもらう】
特定の弁護士を知っている人に教えてもらう方法があります。
友人知人で弁護士に相談・依頼したことのある人がいれば、その人に教えてもらってり、
今では、FacebookなどのSNSで誰か弁護士を知っている人がいないかと情報提供を求めている人もいます。
狭い意味の「紹介」として、きちんと紹介者が弁護士に相談したい人がどういう人かを伝えてくれる場合があります。
そういう紹介をしないで、単に弁護士の名前を誰かに聞いてきたという意味で”紹介”という場合もあります。
この方法でいいのは、その弁護士の情報や感想が具体的に得られるかもしれないというところです。
ただ、都合良く弁護士を知っている人がいるとは限らないのが難点です。
【インターネットで検索する】
グーグルやヤフーなどの検索サイトで検索すれば、弁護士(法律事務所)のホームページやブログなどがヒットします。
[ ●●(地域名) 弁護士]と言葉を入れて検索すれば自分の近くの弁護士を探せます。
検索時に、自分の相談したい分野の言葉を入れれば、検索結果を絞ることができるでしょう。
この検索結果の上位に出る弁護士が、弁護士を探している人にとって合った弁護士かどうかは分かりません。
また、検索結果の上位に出るような対策(SEO対策)している事務所もありますから、検索結果と弁護士の実力等と関連性があるともいえません。
検索した結果に出てくるホームページやブログに書いてある情報が多すぎたりして、迷ってしまうかもしれません。
弁護士会の検索ページで探す方法もあります。
日本の全ての弁護士の登録情報は、日本弁護士連合会(日弁連)のホームページで検索することができます。
また、日弁連では、ひまわりサーチというサービスに登録している弁護士を地域や取扱分野で検索できるページを設けています。
ひまわりサーチでの私のページもあります。
日弁連の他に、各地の弁護士会のホームページでも所属会員を検索できるページを置いているところがあります。
弁護士は、日弁連に所属する他に、事務所の場所を管轄する各地の弁護士会(地方裁判所に対応)に必ず所属しています。
北海道には、札幌弁護士会、旭川弁護士会、函館弁護士会、釧路弁護士会の4つがあります。
弁護士は全国どこでも活動できるので、たとえば旭川に住む方が旭川で起きたトラブルの相談を札幌の弁護士に依頼するといったことも可能です。ただ、近くの弁護士の方が距離的に相談しやすいでしょう。
事業者のサービスとして、弁護士の情報提供しているところがあります。
充分な質・量を提供していると思われるのは、弁護士ドットコムがあります。
弁護士ドットコムでの私のページです。
検索結果を見て探すのは、やりやすいでしょう。ただ、検索で得た情報は、広告の側面もあるのは留意された方がいいと思います。
【広告】
テレビやラジオのCMや、雑誌等の広告に載っている情報で弁護士を探す人もいるでしょう。
広告でのアピールは、「広告だから」という側面もあると思います。
『●●の弁護士』のような書籍や雑誌の特集を見かけることがあるかもしれません。
先日、某出版社が●十万円でそのような書籍に載せませんかという営業をしていることが東京の某弁護士のツイッターで明らかにされてちょっとした話題になりました(税理士など他の専門職でも同じような企画があるようです。)。
出版社が情報をまとめた体で、実際は広告でしかない場合もありますので、そういった情報を鵜呑みにするのは気を付けた方がいいでしょう。
今はあまり需要がない電話帳(タウンページ)で、近くの地域の弁護士を探す方法もあります。
弁護士のページには広告も載っていますので、それを見て探す方法もあります。
【法律相談】
弁護士会での法律相談センターや市役所等の法律相談に申し込んでみれば、その予約時間に担当した弁護士に出会うことができます。
当然ですが、この方法だと、その法律相談センター等に入っている弁護士としか出会わないことになります。
【飛び込み】
裁判所の周りなどに法律事務所が集まっていますし、自宅や職場の周りの生活圏に法律事務所の看板を目にするかもしれません。
法律事務所に訪問して、弁護士に相談を求めるという方法もあり得ます。
しかし、大抵の弁護士は、アポ無しで飛び込みで来られる相談者を警戒しますし、突然来られても面談できるタイミングとは限りません。
飛び込みで訪れるのはお勧めできません。
目に付いた法律事務所で相談してみるのであれば、
事務所名などから連絡先を調べて、電話して相談の日時の予約を入れるべきでしょう。
弁護士を探すにも色々方法があり、一長一短がありますが、
弁護士を探す方は、ある程度の量の情報を得て検討されてはと思います。
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弁護士 林 朋寛
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弁護士ドットコムニュースに取材協力した記事が公開されています。
【博多駅前陥没】玄関前崩壊のセブンイレブンやシステム障害の銀行、補償はどうなる?
この記事の中で、私は、注文者責任(民法716条)について説明しています。
この点について、国家賠償法1条が適用されるから民法716条の適用は誤りだという指摘があったそうです。
ご指摘の点については、私としては、
ただ、JVへの指図・注文が国賠法1条の「公権力の行使」
また、国賠法2条ではなく1条だという指摘もありました。
しかし、道路もしくは建設中の地下鉄設備の問題となれば、国賠法2条の営造物の設置管理の瑕疵の問題になると考えます。
上記の地下鉄工事の陥没が「公権力の行使」によるものだといえるだけの事実が出てくれば、国賠法1条の適用になってくるかもしれません。
今回の事故の原因がどういったことなのかは、いずれ明らかになるでしょう。
現時点の情報では、上記の記事のような整理となるかと考えています。
もし、私が今回のような事故で損害を生じた企業・個人の代理人となって、損害賠償請求するのであれば、そのときに判明あるいは推測される事実に基づいて、国賠法でも民法でも適用できるもので法律構成して、市にも施工したJV(共同企業体)にも両方にがっちり請求すると思います。
両方とも損害賠償の支払いを渋るようであれば、双方を被告として訴訟提起して責任の所在を明らかにするよりないでしょう。
国家賠償法
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ブログ http://bit.ly/2eOFTn8
個人でも法人でも、社会活動を営んでいる上で、行政機関(国や都道府県・市町村など)から行政処分を受けることがあります。
その処分に納得がいかない場合、審査請求などの不服申立てをすることができます。
行政機関の認定する事実が真実とは限りませんし、法令の解釈・適用が正しいとも限りませんから、納得できなければ国民の権利として不服申立てをすることは当然です。
しかし、不服申立てをするにはいつまで・どのように申立をすれば良いか、そもそも不服申立てができるのかどうか、一般には分かりづらいことがあります。
そのため、行政不服審査法82条で、行政機関は不服申立てができる旨と申立てる相手と申立ての期間を書面で、行政処分を受ける人にに教える(教示)義務があるとされています。
ただ、実際にこの教示の書いている行政処分の決定書などを見ると、教示の部分がやたら小さい文字(5ポイント程度の場合もあるのではないかと思います。)で書かれています。
それでは、不服申立てができることなどが書かれていても、読む気を無くさせたり、気付かせなかったりしてしまいます。
ちなみに、訪問販売等を規制する特定商取引法施行規則では契約書面を8ポイント以上の文字で作成すべきこととされています。
不服申立てができること自体が国民の権利ですし、不服申立てによって守られる権利・利益があるかもしれません。
そのような国民の権利・利益を守るためにも、不服申立てについての教示はもっと大きな文字で記載されるべきです。
気付きやすく分かりやすい教示を受けた上でこそ、国民の権利行使が可能になって、権利が保障されたといえると思います。
その上で、手続や主張すべき法律関係や事実について弁護士に相談して言うべき時に言うべきことを主張すべきです。
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弁護士 林 朋寛
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衆議院の解散の話題が出ているようです。
しかし、衆議院議員の小選挙区の区割は、憲法に違反したままです。
現在の衆議院議員のうち比例区選出以外は、憲法という国の基本ルールに違反した選挙で選出された者です。
そんな議員が最優先で取り組むべきであったのは、民主主義の国の基本として重大な選挙制度の改革でした。
そのような改革がいまだにできなかった現在の議員・政党は、国政を預かる能力・資質を欠くというべきでしょう。
また、憲法に違反する選挙で選出された議員が、TPPや憲法改正を論じるなど、国の将来を左右させるのは正統性を欠く不法な状況です。
民主主義の国家として最優先で手を付けるべき選挙制度を放置したまま解散するなど、無責任の極みです。
現在の衆議院議員の小選挙区の選挙(平成26年12月14日施行)については、昨年11月25日の最高裁判所大法廷判決で、いわゆる違憲状態の判決が出ています。
違憲状態判決というのは、
⑴選挙区割りは憲法違反
⑵でも、憲法違反を認識してから公職選挙法を改正するまで合理的期間はまだ過ぎていない
ので、まだ憲法違反ではないという判決です。
つまり、選挙区割り自体は、憲法に違反しているのです。
この最高裁判決では、
本件選挙区割りはなお憲法の投票価値の平等の要求に反する状態
であったとされています。
合理的期間については、
憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っているとする当裁判所大法廷の判断が示されたのは,平成23年大法廷判決の言渡しがされた平成23年3月23日であり,国会においてこれらが上記の状態に至っていると認識し得たのはこの時点から
として、
平成23年大法廷判決の言渡しから本件選挙までの国会における是正の実現に向けた取組は,上記改正法の施行後に更なる法改正にまでは至らなかったものの,同判決及び平成25年大法廷判決の趣旨に沿った方向で進められていた
ということで、合理的期間はまだ過ぎていないとしています。
違憲状態判決というのは、司法権を担う裁判所として、政治部門に遠慮をしたインチキ判決だと思います。
普通の国民が何か法律に違反することをしても、その法律違反を解消するのに必要な時間が過ぎていないなどとして許されることはありません。
上記のとおり、違憲性の認識が平成23年3月23日としてその間に取組をしていたから許してしまうというのは、わが国の国権の最高機関である国会に課されるべき責任のハードルが低すぎでしょう。
国会議員に異様に甘い判決が違憲状態判決です。
(それでも今の国会議員は、甘やかされた違憲状態判決でも、早々の改善をしません。)
大法廷の判決は、結論が一致した「多数意見」の他に、多数意見に理由を付け加える「補足意見」、多数意見と結論が同じで理由の違う「意見」、多数意見に反対する「反対意見」が付くことがあります。
反対意見は、国会に大甘の多数意見よりはまともですので、紹介します。
大橋裁判官の反対意見は、国会の怠慢について厳しく指摘しています。
鬼丸裁判官は、実質的な一人一票の保障について明言しています。
木内裁判官は、選挙区の選挙人の人口が少ないところから選挙無効にするという国会にとってインパクトのある判決の方法を示しています。
【大橋正春裁判官の反対意見】
「本件選挙区割りによっても違憲状態が解消されたことにはならず,したがって憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったもので,本件選挙区割りは憲法の規定に違反すると考えるものであり,また本件では事情判決の法理を適用すべき事情はなく,本件選挙区割りに基づいてなされた本件選挙は本判決確定後6か月経過の後に無効とするのが相当であると考える。」
「国会は,遅くとも平成23年大法廷判決の言渡しによって旧選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていると認識し得たのであり,合理的期間の始期は遅くても言渡しがされた平成23年3月23日ということになる。」
「平成23年大法廷判決が指摘した違憲状態は,現在でもいまだ解消されていないことになる。」
「平成23年3月23日から本件選挙施行日である平成26年12月14日まで3年8か月が経過しており,国会に認められた選挙制度の構築についての広範な裁量権や議員間で利害が激しく対立する選挙区割りの改正の困難性を考慮しても,3年8か月は国会が旧選挙区割りを憲法上の平等価値の原則に適合するものに改正するのには十分な期間である。したがって,本件では憲法上要求される合理的期間を徒過したものといわざるを得ない。」
「本件選挙後の国会における是正の実現に向けた取組については,現在まで具体的な成果を上げているものでなく,現在までに既に4年8か月も経過していることを考慮すれば,合理的な期間が経過しているとの上記の判断を左右するものではない。」
「平成23年大法廷判決から現在まで既に4年8か月が経過しているにもかかわらず国会による是正措置は実現されていないのであり,選挙人の基本的人権である選挙権の制約及びそれに伴って生じている民主的政治過程のゆがみは重大といわざるを得ず,また,立法府による憲法尊重擁護義務の不履行や違憲立法審査権の軽視も著しいものであることに鑑みれば,本件は事情判決により選挙の違法を宣言するのにとどめるべき事案とはいえない。
他方において,選挙無効の効力を直ちに生じさせることによる混乱を回避することは必要であり,本件選挙は本判決確定後6か月経過の後に無効とすることが相当である。
投票価値の較差の是正が困難であるのは,選挙制度構築の技術性や専門性に由来するものと利害関係の対立,特に直接の利害関係人である現職議員間の利害対立によるものとが考えられるが,国会はこれまで何度にもわたり衆議院議員総選挙の小選挙区選挙に関する定数是正を検討するための審議会等の組織を設置し検討を加えてきたのであるから,技術的・専門的な知識・経験を蓄積してきたものと考えられ,技術性・専門性が是正措置実現の大きな障害であるとは考え難く,主たる原因は現職議員間の利害対立にあるものと考えられる。しかしながら,本件は裁判所が違憲状態にあるとした本件選挙区割りの是正に関わるのであるから,憲法尊重義務を負う個々の議員だけでなく立法府として速やかにこれを是正する法的義務を負っているものといわなければならない。そもそも利害関係を調整して必要な決定を行うのが立法府の役割である以上,利害対立を理由に決定を避けることは許されない。」
【鬼丸かおる裁判官の反対意見】
「本件選挙時の選挙規定は憲法に違反するに至っており,本件選挙についてその違法を宣言することが相当であると考える。」
「衆議院議員の選挙における国民の投票価値につき,憲法は,できる限り1対1に近い平等を基本的に保障しているものと考える。
その理由は,両議院議員は,日本国憲法の前文,13条,14条1項,15条1項,44条ただし書に規定されているとおり社会的身分等により差別されることのない主権者たる国民から負託を受けて国政を行うものであり,正当な選挙により選出されることが憲法上要請されていると解されるところにある。特に衆議院議員を選出する権利は,選挙人が当該選挙施行時における国政に関する自己の意見を主張するほぼ唯一の機会であって,国民主権を実現するための国民の最も重要な権利であるが,投票価値に不平等が存在すると認識されるときは,選挙結果が国民の意見を適正に反映しているとの評価が困難になるのであって,衆議院議員が国民を代表して国政を行い,民主主義を実現するとはいい難くなるものである。以上の理由により,憲法は,衆議院議員選挙について,国民の投票価値をできる限り1対1に近い平等なものとすることを基本的に保障しているというべきである。
ところで憲法は,両議院議員の定数,選挙区や投票の方法等その他の両議院議員の選挙に関する事項を法律で定めると規定している(43条2項,44条,47条)のであるから,国会が上記事項を決定するに当たり立法裁量権を有することは予定されているところであるが,私は,国会が立法裁量権を行使して両議院議員選挙制度の内容を具体的に決定するに当たっては,憲法の保障する投票価値の平等を最大限尊重し,その較差の最小化を図ることが要請されていると考える。しかし,国会が配慮を尽くしても,人口異動による選挙人の基礎人口の変化や行政区画の変更といった社会的な事情及びその変動に伴ういわば技術的に不可避ともいうべき較差等が生ずることは避け難く,このような較差は許容せざるを得ないものである。したがって,投票価値の較差については,それが生ずる理由を明らかにした上で,当該理由を投票価値の平等と比較衡量してその適否を検証すべきものであると考える。」
「選挙区間の人口較差を2倍以内とすることに終始した本件選挙区割りは,憲法の要求する1人1票に近い投票価値の平等に反するものであるといわざるを得ない。」
「国会が平成23年3月23日に投票価値の平等に反する状態にあることを認識し得てから本件選挙までの間に,3年8か月が経過した。これは,衆議院議員の1期分の任期にほぼ等しい期間である。その一方で,同日以降に衆議院において少なからぬ法案が可決されてきた状況に照らすと,期間の長短のみならず是正のために採るべき措置の内容,そのために検討を要する事項,実際に必要となる手続や作業等の考慮事項を総合考慮しても,国会が司法の判断の趣旨を踏まえて適切に衆議院議員の定数配分や選挙区割りの是正に取り組んだならば,上記期間内に,憲法の投票価値の平等の要求するところに沿った定数配分や選挙区割りの是正を行うことは可能であったろうと考えるものである。
衆議院議員の定数配分や選挙区割りの見直しについては,種々の論議があることは容易に想定できることであり,また国会内の合意を得て見直しができるのであれば,それが最も望ましいことであることについては,私も何ら疑念を持つものではない。けれども,どのような法案であっても問題への対応や合意形成に困難がないということは少ないのであり,また全ての法案が国会の合意形成を得て成立するものではないことはいうまでもない。国会は,国民を代表する両議院の議員が論議を交わし一定期間論議した後に多数決の原理に従って議決し立法に至るという代表民主制を具現する場である。衆議院議員の定数配分の見直しや選挙区割りの改革等に関する事項に関しては国会の合意形成を要するとする憲法上の要求はないのであるから,他の立法と異なる取扱いをすることは相当ではないと考える。
一方,当裁判所の大法廷判決において既に2度にわたって,衆議院小選挙区選挙における投票価値の較差は憲法の要求に違反する状態であることを指摘され,これらの判決には国会が是正の責務を負う旨判示されていることに照らせば,是正は国会の急務であって,立法裁量権に配慮しても,合理的期間を緩やかに解することは許されるべきではないであろうと考える。
以上のことから,憲法の予定している立法権と司法権の関係を考慮してもなお,本件選挙時には既に憲法上要求される合理的期間を徒過したものというべきである。」
【木内道祥裁判官の反対意見】
「国会が憲法上要求される合理的期間内における是正がされたか否かの判定は,国会が立法府として合理的に行動することを前提として行われるべきであり,既に平成23年大法廷判決において,違憲状態の主要な原因である1人別枠方式の廃止と新基準による選挙区割規定の改正という,行うべき改正の方向が示されており,改正の内容についての裁量権はこの範囲に限定されている。司法権と立法権の関係に由来するとされる事項は,事情判決の法理を適用すべきか否かの段階で考慮すべきことであり,合理的期間内の是正の有無の判定について考慮すべきではない。また,定数配分の見直しにそれ以外の政策課題が併せて議論されているというような実際の政策問題も,合理的期間内の是正の有無の判定について考慮すべきではない」
「合理的期間の起算点が平成23年大法廷判決の言渡しがされた時点であり,本件選挙施行までの期間が3年9か月弱となる(この点は多数意見も同じである)ところ,平成23年大法廷判決,平成25年大法廷判決が憲法上の要求とした投票価値の平等の実現を阻害する1人別枠方式という要因の解消は,平成25年改正後の平成24年改正法による本件選挙区割りにおいても実現していない(このことは,既に,平成25年大法廷判決が示している)のであるから,本件選挙施行時点まで是正がなされなかったことが,合理的期間を徒過したものであることは明らかである。
したがって,本件区割規定は,違憲の瑕疵を帯びるものである。」
「投票価値の平等を害することを理由とする選挙無効請求訴訟についてなされた当審大法廷判決は,参議院議員通常選挙についての昭和39年2月5日のものを最初とし,18回なされている。この中で,いわゆる事情判決の法理が適用されたものは,昭和51年4月14日大法廷判決と昭和60年7月17日大法廷判決の2回であり,それ以外の大法廷判決の多数意見は,定数配分又は選挙区割り規定が違憲とされた場合の選挙の効力という問題については言及していない。しかし,①定数配分又は選挙区割りが違憲状態に至っているか否か,②その場合に,憲法上要求される合理的期間内における是正がなされなかったとして定数配分規定又は選挙区割規定が違憲となっているか否か,③その場合に,選挙を無効とすることなく違法を宣言するにとどめるか否かという3段階の判断枠組みが採られる中で,③の選挙を無効とするか否かは,この種の訴訟において,最も重みのある問題として意識され,その問題を念頭に,前段階の判断もなされてきたと思われる。」
「選挙区割規定が違憲であるにもかかわらず,選挙が繰り返し行われるような場合に,裁判所は違法を宣言するのみで選挙を無効としない判決をただ繰り返すに終始することはできない。また,是正をなすべき合理的期間の幅を広げることにも自ずと限界がある。「選挙を無効とする結果余儀なくされる不都合」(昭和60年7月17日大法廷判決)をできるだけ少ないものとし,選挙権の侵害を回復する方途を求める必要があるのである。」
「私は,平成25年大法廷判決の反対意見において「一般に,どの範囲で選挙を無効とするかは,前述のように,憲法によって司法権に委ねられた範囲内において裁判所が定めることができると考えられるのであるから,従来の判例に従って,区割規定が違憲とされるのは選挙区ごとではなく全体についてであると解しても,裁判所が選挙を無効とするか否かの判断をその侵害の程度やその回復の必要性等に応じた裁量的なものと捉えれば,訴訟の対象とされたすべての選挙区の選挙を無効とするのではなく,裁判所が選挙を無効とする選挙区をその中で投票価値平等の侵害のごく著しいものに限定し,衆議院としての機能が不全となる事態を回避することは可能であると解すべきである。」と述べた。
そして,平成26年11月26日大法廷判決の私の反対意見において「各選挙区における選挙人各人の投票価値平等の侵害の程度を考えると,選挙人としての権利の侵害の最も大きな選挙区は議員一人当たりの選挙人数の最も多い選挙区である。しかし,その選挙区の選挙を無効とした場合,投票価値の較差を是正する公職選挙法の改正が行われて再度の選挙が行われない限り,その選挙区の選挙人が選出する議員はゼロとなる。これでは,選挙を無効とすることが,当該選挙区の選挙人が被っている権利侵害を回復することにはならない。法改正により較差が是正されれば,選挙人の投票価値平等の侵害は解消されるのであるから,選挙を無効とする選挙区の選定に当たって考慮すべきは,法改正による較差の是正までの間の選挙人の権利侵害である。このような観点からすると,議員一人当たりの選挙人数が多いことによる選挙人の権利侵害は,その選挙人数の絶対数の問題ではなく,より選挙人数の少ない他の選挙区の選挙人との比較の問題であるから,議員一人当たりの選挙人数が最も多い選挙区の選挙人の権利侵害を著しくしているのは,議員一人当たりの選挙人数が少なくても議員を選出できる選挙区の存在であり,この選挙区の選挙を無効とすれば,残る議員についての投票価値の較差は縮小する。したがって,限定した範囲の選挙区の選挙を無効とすることによって選挙人としての権利の侵害を少なくするためには,議員一人当たりの選挙人数が少ない選挙区からその少ない順位に従って選挙を無効とする選挙区を選定すべきである。議員一人当たりの選挙人数の少ない選挙区の順に選挙無効とする場合,どの選挙区までを無効とするかは,憲法によって司法権に委ねられた範囲内において,この訴訟を認めた目的と必要に応じて,裁判所がこれを定めることができるものである(昭和60年7月17日大法廷判決の4名の裁判官の補足意見参照)。議員一人当たりの選挙人数が少ない選挙区からその少ない順位に従って裁判所が選挙を無効とする選挙区をどれだけ選定すべきかの規律は,選挙を無効とされない選挙区の間における投票価値の較差の程度を最も重要なメルクマールとすべきと思われるが,この規律は,いまだ熟しているということはできない。」と述べ,特定の選挙区の選挙のみを無効とすることは控えることとした。
平成26年11月26日大法廷判決は参議院議員通常選挙についてのものであるが,議員一人当たりの選挙人数が少ない選挙区からその少ない順位に従って選挙を無効とする選挙区を選定すべきであることは,衆議院議員小選挙区選挙についても同様に当てはまる。前回平成24年12月16日施行の衆議院議員選挙については,私は,区割規定を違憲とし,いわゆる事情判決の法理を適用して違法を宣言するにとどめたが,今回の衆議院議員総選挙は,従来の選挙区割りを基本的に維持して行われたものであり,その全てについて違法の宣言にとどめることはできない。
裁判所が選挙を無効とする選挙区をどれだけ選定すべきかの規律は,従来3段階の判断枠組みの第一段階である選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態(違憲状態)に至っているか否かの判断基準とは性質が異なる。選挙区割りが違憲状態か否かの判断基準は,区割規定(定数配分規定)が「全体として違憲の瑕疵を帯びる」(昭和51年4月14日大法廷判決,同60年7月17日大法廷判決)か否かについてのものであり,その区割基準が投票価値の平等に反するものか否かが重要であり,一律に較差の一定数値によって定めることは,それに達しない不平等を無条件に是認することとなり,不適切である。これに対し,ここで問題となる無効とする選挙区の選定の規律は,違憲判断の及ぶ範囲を一定程度制限するという司法権に委ねられた権能の行使についてのものである。
具体的にどの範囲で選挙を無効とするかは,個々の選挙によって異なることは当然であるが,本件においては,本件選挙区割りによる295選挙区の選挙人数の違いが後述のとおりであることを考慮すると,衆議院としての機能が不全となる事態を回避することと投票価値平等の侵害の回復のバランスの観点から,投票価値の較差が2倍を超えるか否かによって決するのが相当である。
今回の選挙の結果によると,295の選挙区のうち最も選挙人数の少ないのは宮城県第5区(選挙当日で23万1081人),最も選挙人数の多いのは東京都第1区(選挙当日で49万2025人)であり,その比率は1対2.129である。選挙人数が東京都第1区の選挙人数の2分の1を下回る選挙区は,宮城県第5区以外に11あり,少ない順に挙げると福島県第4区,鳥取県第1区,鳥取県第2区,長崎県第3区,長崎県第4区,鹿児島県第5区,三重県第4区,青森県第3区,長野県第4区,栃木県第3区,香川県第3区である。
したがって,この12の選挙区については選挙無効とされるべきであり,その余の選挙区の選挙については,違法を宣言するにとどめ無効とはしないこととすべきである。この12選挙区について選挙が無効とされると,その選挙区から選挙人が選出し得る議員はゼロとなるが,これは,選挙を無効とする以上やむを得ないことであり,較差を是正する法改正による選挙が行われることにより回復されるべきものである。」
アイドルグループの欅坂46のライブの衣装がナチスの制服に似ているということで、アメリカのユダヤ系人権団体が謝罪を求め、レコード会社やプロデューサーが謝罪して、公開されていた画像を削除したというニュースがありました。
この件で、疑問なのは、大きく次の点です。
1 ナチスのに衣装が似ているというのは、具体的にどういう点なのか
2 ナチスのに似ているだけで、なぜ許されないのか
1の疑問について、ツイッターでつぶやいていたところ、どうやら帽子の標章が問題らしいという話があります。
ニュースで出ていた画像を見ても、どの辺がナチス”風”なのかよく分かりません。
ナチスの鉤十字(ハーケンクロイツ)なら、ナチスのマークかなと素人目にも分かるでしょう。
しかし、今回の件は、どういうところのデザインがどういう基準でナチスっぽいのかよく分かりません。
誰か(特に声の大きなところ)が●●●風と決めつけたら、客観的な議論を無視してそれが通るということにもなりかねません。
2の疑問については、ナチスの問題は、ホロコースト等の行為の問題なのかと思います。
とすれば、そういったナチスの行為を肯定、賛美するためにナチスのデザインを使ったというのであれば非難するというのも分かります。
しかし、そういう意図が読み取れるのではなく、単に衣装がナチスっぽいというだけで謝罪というのは主張に飛躍があるやに思えます。
また、ホロコーストの遺族・生存者が見たらナチスのことを思い出すといったことを言われているようですが、それが根拠なら、欅坂46がヨーロッパ進出した際にでも、現地で問題視するなり議論するなりすればいいことでしょう。
力のある団体の言うままに、客観的な分析や検証もないまま謝罪や非難がなされている社会状況がむしろ怖いです。