昨日(6月22日)に野党が憲法53条後段に基づいて、臨時国会(臨時会)の召集を要求したところ、安倍内閣・与党は早期召集に否定的との報道がありました。
わが国の憲法53条は次のとおりです。
第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
衆議院と参議院のどちらかの議院のうち、総議員の4分の1以上の議員の要求があれば、内閣は必ず国会を召集しなければなりません。
国会審議で都合の悪いことを追及されるのを避けたいからといって、内閣が召集を遅らせるようなことは許されていません。内閣が裁量的に召集時期を自ままにできるのであれば、「召集を決定しなければならない。」という規定を実質的に無効にするからです。
憲法が臨時会の召集時期を明示的に規定していないことについては、臨時会がどのような時期・状況で要求されるのかその時々のことなので明示的に規定しなかったことは合理的ですし、できるだけ早く召集されるのが国会の役割からして当然であるとしてあえて規定されていないと言えます。
内閣が国権の最高機関(憲法41条)である国会の召集を遅らせるというのは、国会の権威を著しく傷つけ、国会の活動を阻害するもので、国家国民に対する反逆行為です。
内閣としては、臨時会の召集の要求を受けた以上、できるだけ速やかに召集を決定すべきでしょう。
ところで、衆議院の解散総選挙が行われた際には、選挙の日から30日以内に召集しなければならないとされています(憲法54条1項)。
自民党の改憲草案でさえ、臨時会は召集の要求があった日から20日以内に召集されなければならないとしています。
この30日とか20日というのは、内閣が召集をするかどうかその都合で決めて良い期間ではなく、どんなに遅くてもその期日以内に召集決定をしなさいということです。
また、国会法では、年1回の通常国会(常会、憲法52条)の場合の召集詔書は国会開会の少なくとも10日前には公布しなければならないとされています(国会法1条2項)。しかし、臨時会は、この詔書の交付は10日前によることを要しないとされており(国会法1条3項)、その趣旨は、召集詔書の公布から10日以内でも臨時会の開会がされることがありうるからです。
このほか、衆議院議員の任期満了の場合や参議院議員の通常選挙の場合は、常会や特別会が召集されない限り、任期が始まる日(公職選挙法256条、257条)から30日以内に臨時会が召集されることになっています(国会法2条の3)。
このように、国会召集(内閣の助言と承認により天皇が行います。憲法7条2号)の時期に関する規定から考えれば、臨時会については、10日以内に召集できない合理的な正当理由がなければすぐに召集すべきだといえるでしょう。
理由があってすぐに召集できないとしても、震災で国会議事堂が崩壊したとかでもなければ、要求から30日以内には召集しなければならないでしょう。
もし、要求から30日を経ても臨時会を召集しようとしないのであれば、内閣は憲法に反して(つまり、国家国民に反逆して)臨時会を召集する決定を怠ったというべきでしょう。
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弁護士 林 朋寛
(札幌弁護士会所属)
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