山之内幸夫『山口組顧問弁護士』(2016年・角川)
山口組の顧問弁護士だった元弁護士の手記です。
作者は、昨年の有罪判決確定で弁護士資格を喪失しています。(この立件については問題あるのではないかと思っています。)
なまじのフィクションよりも面白い生々しさがあります。
ヤクザになる人の哀しさとともに暴力団の恐ろしさも具体的です。
東映と徳間書店と山口組の関わりなんて、今どきこんなにはっきり書いて大丈夫なのかなと、一読者なのに心配にもなります。
作者は、もう何も気にしない境地に至っているのかもしれません。
同書でも指摘がありますが、現在は、住居の賃借や不動産や自動車の売買、銀行口座の開設や、レジャーなどで、
暴力団の組員やその家族は、相当の制限を受けています。
57p「いくら何でもヤクザに対する法の運用は不公平極まりない。警察はイケイケで無茶苦茶な法解釈をしてもある程度仕方ないが、検察官や裁判所まで調子に乗って法を歪めていたら将来に禍根を残す。」
この指摘には同感です。国家の法の運用の正当性を確保するためにも、全ての人の自由を保障するためにも、例外なく公正・平等な法の解釈適用がなされなければなりません。
弁護士や弁護士会あるいは、自由や人権を大事に考えている人々から、暴力団員等への扱いについて批判がもっと出るべきではないかと思います。現実にはそうなっていませんが。
暴力団員への社会生活上の制限は、ニーメラーの詩(「彼らが最初共産党を攻撃したとき」)の状況にも通じるものがあります。
違法不当な行為をした場合は、その行為について誰しも法的責任が厳しく問われるのは当然です。しかし、ある立場にあることだけで不利益を与えるようなことは、法の下の平等にも反するものでしょう。
こういったことも考えてしまいますが、
本書は、ヤクザの世界を垣間見せてくれるエンターテインメント作品としても楽しめます。
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弁護士 林 朋寛
(札幌弁護士会所属)
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