取材協力した記事が公開されました。
中森明菜さん「隠し撮り写真」掲載の出版社敗訴、芸能人プライバシー侵害の基準は?
この記事の最後のところで、
「もし仮に、他人のプライバシー権を侵害した賠償責任を上回る利益が見込まれるのであれば、報道機関の中に違法と認識しつつも、撮影・掲載を強行するところもあるでしょう。
強行されるのは、侵害者の見込み利益を下回る金額でしか慰謝料が算定されないからです。そのような裁判所の算定が、そもそもおかしいのではないか」
と述べています。
これは、損害賠償責任を負っても雑誌が売れて儲かるのであれば民事的に違法な行為を出版社側は強行するおそれがあるということです。
週刊誌1冊ごとに単純な計算は正確ではないでしょうが、説明のために言うと、
違法な行為でネタを集めて書いた記事を載せた週刊誌が通常よりも売れて、週刊誌の販売の売上や広告費などで通常より1000万円の利益が出るのであれば、
その違法行為で550万円の損害賠償責任を負っても、
結果として差し引きプラスの儲け(450万円)が出るなら、
違法行為を民事責任として(つまり経済的に)抑制することは難しいということです。
日本の現在の不法行為責任の裁判所の考えでは制裁的損害賠償は認められていないですし、精神的苦痛の慰謝料請求の評価も抑制的です。
制裁的損害賠償(実際の損害額の賠償責任に限らず、制裁として損害賠償の数倍の賠償責任を認めるというようなもの)は難しいとしても、
慰謝料の評価としては被害者にとって納得でき、以後の類似の違法な行為を抑制できる金額を認めるのはおかしくないでしょう。
慰謝料というのは、被害者の被った精神的苦痛を慰謝する(なぐさめる)に足りる金銭ということですから、加害者に儲けが残るような金額で慰謝料として相当な金額だと評価するのは少ないと思うのです。
弁護士としては依頼者への負担(印紙代や弁護士費用)を考えて、裁判所の相場を勘案して慰謝料請求の金額を控えめに評価しがちかもしれません。
しかし、そういう実務感覚が一般の感覚(常識)に合うかどうかを常に留意して損害賠償事案を扱っていきたいと思います。
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北海道コンテンツ法律事務所
弁護士 林 朋寛
(札幌弁護士会所属)
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